東日本大震災の発生から1年が経った。この震災では東北地方の沿岸部を襲った津波により多くの家が被害に遭ったことが鮮明に記憶されているが、一方首都圏では千葉県浦安市などを中心に液状化現象による住宅の被害が発生し、現在も多くの世帯が不自由な生活を強いられている。また、3月15日にも震災の余震と見られる最大震度5強の地震が関東地方で発生し、改めて災害対策の重要性を認識したところだ。
振り返ると、1995年に関西地方で発生した阪神・淡路大震災の後も、国による建築基準の改正や消費者、デベロッパーの意識の変化により”地震に強い”ということは住宅建築において重要な要素となったが、東日本大震災を経てこの必要性が改めて認識されることになったことは言うまでもなく、そして住宅そのものの地震対策のみならず、どこに家を持つかという”地震に強い土地選び”にも強い関心が集まっている。
インターネットQ&Aサービス最大手の「Yahoo!知恵袋」の住宅カテゴリーを見ても「耐震・免震」に対する疑問や不安に関する書き込みは毎日多くのスレッドが更新されており、関心の高さが伺えるほか、大手デベロッパーの長谷工アーベストが2011年4月に行ったインターネット調査においても回答者の90%が「安全・安心に住まうことへの意識が高まった」と回答。「耐震性能等への建物構造」(91%)、「防災対策」(56%)、「建築後の点検・補修などのアフターサービス」(49%)などが安全な住宅に必要な要素として上位にあがっている。
では、このような消費者の意識の変化について、住宅を提供する現場ではどのように把握し、そしてそのニーズに今後どのように応えようとしているのか。城南建設株式会社の営業企画本部で宅地建物取引主任者の中村裕行氏と同社施工管理部で一級建築士の菊地成仁氏にお話を伺った。
● 震災後、住まいの耐震性・耐久性に対する価値観が変化
まず、中村氏に販売現場での来店者の声について聞いた。震災発生以前から注文住宅を建てる上で土地・建物の耐震性、耐久性に対する関心は低くなかったが、震災後、「震度いくつまで耐えられるのか?」「建物の耐震等級は?」「土地は液状化しないか?」といった問合せが一層増えているという。また、同社の店舗で年間10,000名以上から回収しているアンケートでも、「今の住まいに対する不満」の上位に耐震性や耐久性に対する不安、家の強度や立地に対する不満などが多く挙がっているそうだ。「以前から地震に対する意識はあったが、それが昨年の東日本大震災以降から消費者の価値観が大きく変化したことを実感している」と中村氏は語る。
また、家を造る現場を取り仕切る菊地氏も、「消費者の考え方は耐震性にシフトしている」と付け加える。同社は震災以前から一貫して「頑丈な家づくり」をポリシーに注文住宅を施工してきたこともあり、その方向性が正しかったことを実感しているそうだ。「デザインや価格も大切だが、住宅メーカーが一番大切にしなければならないのは、それが”安心して住める家”であることだ」(菊地氏)。
菊地氏によると、最近の耐震技術のトレンドは「免震」と「制震」だという。「免震」と「制震」の違いについて、菊地氏は「免震は”ゆれない家”=ベアリングなどの緩衝物を土台に入れることで、建物に伝わる揺れ自体を食い止める仕組みで、制震は”ゆれをコントロールする仕組み”。揺れを最小限にとどめる装置を建物に組み込むことにより、揺れによる家の損傷を最小限に食い止める仕組みだ」と説明する。免震構造はタワーマンション等の高層建築物で利用され性能も実証されている。しかし施工コストが高価になりがちで定期的なメンテナンスも必要とされるため、城南建設が供給する木造住宅においては制震装置のニーズが消費者には高いと語る。同社が3年前から提供している制震パネル「JETS」は価格的にも安価でメンテナンスフリーのため震災後のニーズも高く、顧客満足度も高いそうだ。
● “地震に強い家”とは何か ”地震に強い土地”は、どのように選ぶべきか
それでは、消費者は耐震性・耐久性が十分に備わった”地震に強い家”や液状化などのリスクが少ない”地震に強い土地”をどのように見極めれば良いのだろうか。
まず建物の耐震性について中村氏は、「建物には法的な耐震基準や構造計算書などの資料が必ずあるが、消費者にはわかりづらい。単刀直入に”実際に揺らして”それを消費者の視点で確認して頂くことが大切、”百聞は一見にしかず”である」と語る。つまり、住宅メーカーが行なっている「耐震実験」の結果を映像などで確認してみるのが一番わかりやすいという。ちなみに、同社でも独立行政法人土木研究所において実施した実大建物による耐震実験の模様をウェブサイトで公開している。その際の実験では最大で兵庫県南部地震(M7.3)の1.5倍の地震動を想定した耐震実験を5回行い建物の強度を確かめているそうだ。
また中村氏は、「耐震基準を超えていても構造や建材の違いによってその強度には差ができる。間取りひとつとっても耐震性に影響を与えることがあるので、建築士と十分に話し合ってほしい」と語る。そして、住宅を購入した後に万が一の事態が発生した際に、どのような保証・補修をしてくれるのかについても妥協せずに検討して欲しいと付け加えた。なお、同社が地盤調査・地盤改良した土地と、建物については最長20年の「地盤保証」「建物保証」を提供している。「建物保証」は良く聞くが、地盤に20年保証を付加した制度を実施している住宅メーカーは数少ない。
一方、土地について中村氏は、「雨が降ったあとにその土地を見に行く」ということを勧めている。つまり、雨が降ったことによって水が土地にどのように溜まるのか、どのように流れているのかを確認することや、実際に現場に行くことによってその土地に長く暮らしている人達からの意見を聴くこともできるのだという。
当然、住宅メーカーでもそのような調査は行なっているが、実際に現地に行ってみることは重要だ。また、国土交通省が公開している地盤調査の結果なども参考にしながら、”自分が暮らす土地”に対する意識を強く持つことが大切だという。「土地も建物もしっかりと納得して選び、購入して欲しい。そのお手伝いをすることが私たちの役割だ」(中村氏)。
また菊地氏によると、土地の液状化の可能性は土地の硬さではなく地層の種類によるという。「特に以前そこが田んぼ、池や沼、海などを埋立てた土地の場合は注意が必要。その土地が歴史的にどのような場所だったかを知ることが大切だ」(菊地氏)。ちなみに、東日本大震災で液状化現象が見られた千葉県浦安市や神奈川県横浜市の沿岸部の地層は「砂地層」が多く地下水位も高かったという。その地層が大きな力で揺さぶられたことによって地下水と砂が分離し、液状化現象が起こったのだそうだ。
● 地震に強い家を造るために、住宅メーカーが提供しているテクノロジーとは
それでは、このような顧客ニーズに対して住宅メーカーである城南建設はどのような形で応えているのだろうか。土地、建物それぞれの特徴について伺った。
まず、土地について。菊地氏によると、土地選びから城南建設が請け負う場合、地盤調査は全ての建設予定地について行い、その土地の地盤に合った家の建て方を設計しているのだという。「どんなに地震に強い家を造っても、地盤がしっかりしていなければ意味がない」と菊地氏。地盤調査は、地面にドリルを刺して圧をかけ、ドリルが進むスピードで土地の硬さを測る「スウェーデン・サウンディング法(SS法)」という方法で行い、地盤がゆるい場合には地盤改良を行なってから建物を建てるという。地盤改良の方法は様々だが、一般的には鉄製の杭を地面深く岩盤まで打ち込み、岩盤と杭で建物を支える構造を造るとのことだ。
次に建物について。菊地氏は、「建築基準法では”耐震性に関する規則”が定められている。その基準を守っている建物なら安全であると一般的に捉われがちだが、その解釈には注意が必要だ」と語る。つまり、建築基準法は建物に対する「最低限の基準」を定めたものであり、これに適合しているから地震に対して絶対的な強度を持っているとは言い切れないのだ。菊池氏によると、城南建設では法の基準を上回る耐久性を追求し、地震の横揺れや台風等の強い風からも家を守る「耐力壁」、基礎で使用する鉄筋の太さや本数、強度のある木材の採用などを通じて、建築基準法の1.5倍程度の耐震性を確保しているという。
中でも同社は木材に強いこだわりを持っており、建物の主要商品の土台、通し柱、間柱、壁の中の筋かい(交差させて壁の強度を確保する構造)には樹齢50年から60年の無垢の国産ヒノキを使用しているという。「揺れに対して強度が求められる部分には妥協せずに最も強度があり、最も腐りにくい建材を使い、頑丈な家を造っていく」と菊地氏は語る。なお、3月31日と4月1日には神奈川県相模原市において城南建設が施行する建物の構造見学会が開催され、今回紹介した同社の取り組みを体験できるという。
● 家の本質的な価値を追求していく
最後に、今後の家づくりについて城南建設の考えを両氏に聞いた。中村氏は、「長く住める家」にこだわりを持っていきたいと語る。「日本の家の寿命は一般的に欧米に比べると短いと言われているが、私たちは100年、200年と安心して住めるような頑丈な家づくりを追求していきたい。これは震災が起きる前から変わらない姿勢だ」と語った。家に対する消費者の価値観は多様化しているなか、今こそ家の本質的な価値である「何かが起きたときに耐えられる家」を見直すべきだと言えるのだ。
一方菊地氏は、「家づくりで一番大事なのは、どこに住むか、誰と住むか、どのような家でどのような ライフスタイルを実現するかということ。私たちはその希望に合った土地を選び、安心して暮らせる家を設計し造る。それをワンストップで提供していきたい」と語る。土地選びからアフターサービスまでを一貫して行うことで、お互いが理解しながら理想の家を造っていくことを目指している。
消費者の住まいに対する価値観の変化に応えるように、住まいの形やあり方も時代と共に変化している。しかし、一番大事なのは「万が一の事態になっても、そこが安心して命を預けられる場所」であるかどうかということだ。震災をきっかけにその重要性を再認識することになったのだが、改めて自分にとって理想の住まいとは何かを考えてみる必要があるだろう。
japan.internet.com 3月26日(月)12時1分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120326-00000014-inet-inet